【メリーさんと五色(と牛島)】
ある日のこと、部活後、寮で夕飯を食べていると、五色の携帯が珍しく鳴った。
あれ、マナーにしてなかったかな、と五色が不思議そうに携帯を取り出すと、着信で、電話に出る。
『ワタシ、メリー。イマ、エキニイルノ』
「へ?」
電話の主はそれだけを伝えると、電話を切ってしまう。
訳が分からない、と言う顔の五色が、共に食事していた白布や川西、瀬見や牛島達にこのことを告げると、牛島以外は顔を蒼褪めさせた。
「…メリーさんってまさか」
「なんですかね?俺外国人の女の人に知り合いとか居ないんですけど間違い電話ですかね?」
「うっそだろお前」
白布がドン引きの視線で五色を見るも、本気で分からないらしく頭にはてなを浮かべている。
すると、また電話が鳴り響く。
『ワタシメリー、イマ、3チョウメのコンビニノマエニイルノ』
「え、結構近くまで来てます!!」
「おい五色、スピーカーにしろ」
「あ、はい」
白布が思わずそう言ってスピーカーにする、次の電話からは全員聞ける筈だ。
「五色、そのめりいとやらは、お前に会いにくるのだろう?」
「牛島さん?でも俺知らない人なんですけど」
「お前は知らずとも向こうは知っているのかもしれない。しかも態々律儀に今どの辺に居るのかを連絡してくるようなまめな女子だ。これはこちらもきっちり持て成して然るべきではないか」
「!!成程そうですね!俺のファンかもしれないです!なんてたって未来の大エースですから!!」
「そうと決まればお茶と菓子を用意するぞ。安心しろ、昨日実家から送られてきた良いどら焼きがある、それをやろう」
「いいんですか牛島さん!」
「ああ。折角だから使ってくれ。3丁目ならあと10分程か?お茶を用意しろ」
「はい!!急須どこでしたっけ?!俺緑茶淹れます!」
「ついでに俺にも淹れてくれ。お茶飲みたい」
「任せてください!!」
白布・川西はやべえなんか面白いことになってきたからもう黙ってようと決めたらしくだんまりを決め込み、瀬見は弱冠心配そうな顔をしていたが山形がまあ怪異の一つや二つ、余裕で捻るだろうあいつら、と励ましていた。
大平は、カレーのお代わりを取りに行っていた。
『ワタシメリー、イマ、リョウノイリグチニイルノ』
「あ!!寮に着いたみたいです!!迎えに行きましょう!!待っててくださいねメリーさん!!」
『エックルノ?!』
「勿論迎えに行きますよ!!お茶とお菓子も用意してます!!」
『マサカノカンタイ?!』
「あ、牛島さんの分のお茶どうぞ!」
「うむ、うまい」
『ドウイウコトナノ・・・』
「おいメリーさんが困惑してるぞ」
「誰か助けてやれよ」
「え?どっちを」
「メリーさんじゃね?」
川西と白布が真顔でそんなことをいうものだから、三年全員が噴き出した。
そんな中、また電話が鳴る。
『ワタシメリー、イマアナタノウシロニイルノ』
「あれぇいつの間に?!?!」
その電話を聞いた瞬間勢いよく振り返った五色だったが、手にはアツアツの緑茶とどら焼きを持っていた。
もう一度言う。
あ つ い お ち ゃ を も っ た ま ま い き お い よ く ふ り か え っ た
「あ」
勢い余ってお茶が吹っ飛び、熱湯のお茶がメリーさんに直撃した。
『アッヅ!!!!!!!!!!』
「うわああああごめんなさああああい!!!!」
ついでに吹っ飛んだどら焼きがメリーさんの頭にぽふりと乗っかり、メリーさんはアツイアツイと言いながら涙を浮かべたまま消えてしまった。
消えた彼女に茫然とする五色と、それを見て尚いつもの無表情で牛島が呟く。
「…どら焼きと緑茶はお気に召さなかったのだろうか」
「若利君、多分そこじゃない」
「ああそうか!女の子でしたもんね!ケーキと紅茶のが良かったですかね?!」
「工、多分それでもないねえ」
「よし、ならば次はケーキと紅茶で持て成そう」
「多分二度と来ないから要らない心配だと思うよ」
天童が弱弱しく突っ込むが、ダブルエースは全く聞いちゃいなかった。
天然エース共の心配は何一ついらなかったなと全員何事も無かったかのように食事を再開させるのであった。
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